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3年後にやってくる大規模修繕工事、いますぐやるべきことは?

株式会社ソーシャルジャジメントシステムマンション管理の基礎知識 3年後にやってくる大規模修繕工事、いますぐやるべきことは?

3年後にやってくる大規模修繕工事、いますぐやるべきことは?

マンションの大規模修繕工事とは?

管理組合にとって、最も大きなイベントと言われるのが「大規模修繕工事」です。

マンションは戸建て住宅に比べると建物の規模が大きく、いろいろな設備もあります。その清掃や点検、メンテナンスは管理組合が主体となり、日頃から行っているはずです。

しかし、中には、屋上の防水層のやり直しや外壁の補修、非常階段や雨どいなど鉄部の塗装といった規模の大きな修繕工事があり、これらを「大規模修繕工事」と呼びます。

大規模修繕工事の目的は、建物や設備を新築時の状態や性能に戻すことです。多くは建物に足場を掛けて行う必要があり、ばらばらに行うのは効率が悪いので、まとめて一度に行います。

また、工事費も多額にのぼるため、管理費とは別にあらかじめ概算で費用を想定し、「修繕積立金」として準備します。

「大規模修繕工事」はおおむね、新築から12~15年間隔で行われますが、きちんと実施しようとすれば建物の現状確認や発注先の選定などに2~3年かかることはざら。

「3年後に大規模修繕工事の予定」という築10年前後のあたりから、役員のみなさんの責任は重大です。

大事なのは適切な時期に、適切なコストで行うこと

大規模修繕工事を行うタイミングについては、それぞれのマンションにおいて新築分譲時に売主のデベロッパーが作成する「長期修繕計画」で設定されており、一般的には10~15年周期が多いようです。

また、この長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額も算出されています。

しかし、大規模修繕計画はあくまで予定であり、立地状況や普段のメンテナンスなどによって、建物や設備の劣化の進み方は異なります。

長期修繕計画で設定されたタイミングになると、管理会社からよく「そろそろ大規模修繕工事をしましょう」といった話が出ますが、本当にそうかどうかは慎重に判断すべきです。

長期修繕計画で設定されたタイミングが3年後くらいに来る時期になったら、理事会の諮問機関として大規模修繕工事の専門委員会を立ち上げ、マンションの所有者の中から理事経験者や建築関係の専門家などを募るとよいでしょう。

そして、この専門委員会が中心となって、「建物診断」を外部の専門家に依頼することをお勧めします。

建物診断は、建物や設備の劣化状況を専門家が目視で検査したり、検査機器を使って調べたりするもので、集めた情報やデータに基づき、最も効果的なタイミングを検討します。

ある程度コストはかかりますが、想定以上に劣化が進んでいる箇所を発見したり、逆に劣化がさほどでもないことが分かれば、時期を後ろにずらすことが可能かもしれません。

「大規模修繕工事」で大事なのは、適切な時期に、適切なコストで行うことです。

様々なプロセスの透明化も成功のカギ

実際に大規模修繕工事を行うとなった際も、理事会が専門委員会と協力しながら上手に進めましょう。特に重要なのが、工事に関わる様々なプロセスの透明化です。

例えば、大規模修繕工事の工事方式には大きく分けて、「責任施工方式」と「設計監理方式」があります。

「責任施工方式」とは、管理会社や工事会社に工事の内容から施工まですべて任せるものです。理事会の手間暇は少なくて済みますが、工事の内容やコスト、工事の実施状況のチェックが十分に行われるのか疑問があります。

一方、「設計監理方式」とは、工事そのものは工事会社が行いますが、工事内容やコスト、工事の実施状況のチェックを工事会社とは別の設計事務所に依頼するものです。先ほど触れた「建物診断」と合わせて依頼するケースもあります。

ここ数年、大手不動産会社が分譲したマンションで欠陥問題が相次いでいますが、新築工事だけでなく大規模修繕工事でも欠陥や手抜きはありえます。今後は「設計監理方式」を基本に考えるべきでしょう。

工事業者の選定についても、「設計監理方式」であれば設計事務所のアドバイスを受けながら、管理組合が主体的に選ぶことができます。

費用が不足するようなら早めの対策を

なお、費用については、修繕積立金として予め準備するのが一般的です。

しかし、実際には不足しているマンションが少なくありません。これは新築分譲時に、売主が売りやすくするため修繕積立金の金額を適正な水準より低く設定しているのが最大の原因です。

1回目の大規模修繕工事はなんとなっても、2回目については修繕積立金の大幅な引き上げや一時金、あるいはローンの借り入れが必要なマンションがほとんどではないでしょうか。

大規模修繕工事が近づいて来たら、資金面についてもチェックして、例えば管理費を引き下げてその分を修繕積立金に回すなど、早めに手を打つべきです。

大規模修繕工事はマンションの居住性や資産価値を守っていくために不可欠ですが、その実施にはいろいろな面からの準備が重要です。