組合資金の犯罪はどのマンションでも起こりえる!
みなさんが何気なく毎月支払っている管理費や修繕積立金。しかし、マンション全体でみると年間数百万から数千万円になることも珍しくありません。修繕積立金は特に、長年にわたって積み立てるので、残高が1億円を軽く超えることだってあります。
この組合資金を巡って様々な犯罪が発生しており、あなたのマンションでもいつ起こるかもしれないのです。
犯人は管理会社関係者か組合役員がほとんど
昨年(2015年)7月、業界大手の三菱地所丸紅住宅サービス(現:三菱地所コミュニティ)のフロント担当者による金銭着服事件が発覚しました。同社の元社員が愛知県内の複数のマンションで、特定の工事業者と共謀して工事を実施したように装い、工事代金を組合口座からその業者に支払った上で着服していたものです。
期間は2005年から2015年までの10年に渡り、被害総額は約8億4千万円にのぼりました。
また、今年(2016年)2月、新潟県のリゾートマンションで管理組合の前理事長が管理費などから合計12億円近い資金を着服したとして逮捕されました。
この人物は公認会計士で、監査法人の代表理事も務めていました。マンションが分譲された当初、管理会社の不正を追求したりしていたので、他の理事や区分所有者から一目置かれ、結果的に組合資金の管理を一手に握っていたのが一因でした。
こうした管理組合の資金を巡る事件は、以前からありますし、最近も決して減っているわけではありません。
犯人はほとんど、管理会社の関係者か管理組合の役員です。
フロントマンなど管理会社の関係者が関わった場合、管理会社がマンションの組合に弁済するのでお金の被害はほぼ回復できます。
一方、管理組合の役員などが関わっていた場合、当人がすでに金銭的に困っていたり行方不明になったりして、被害の回復は難しいことが多いようです。
組合資金の犯罪はなぜなくならないのか?
なぜこうした組合資金を巡る犯罪が、繰り返し起こっているのでしょうか。
原因のひとつは、厳しいことをいうようですが、マンションに住む区分所有者の危機意識の低さにあります。
管理については役員と管理会社に任せておけばいいだろうと考えがちで、組合の資金の取り扱いについてもほとんど気にしていないのではないでしょうか。
管理会社にしても繰り返し事件が発生しているため、社内でのチェック体制の強化や社員教育に力を入れているようです。
しかし、冒頭で紹介した三菱地所丸紅住宅サービス(現:三菱地所コミュニティ)の事件では、同社自身が偽装工事をチェックする体制が社内になかったことを認めています。
過去にはその他の業界大手でも、社員による組合資金の着服事件は繰り返し起きているのです。
なお、この様な不祥事件(国土交通省がマンション管理会社等に行った行政処分のみ)は、国土交通省ホームページに「ネガティブ情報」として掲載されており、検索できます。
http://www.mlit.go.jp/nega-inf/
組合資金の犯罪を防ぐにはどうしたらいい?
組合資金を巡る犯罪を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか。
答えとしては、当たり前のことを当たり前にやるしかありません。次のような項目を参考にしてください。
- 通帳と印鑑は理事長と管理会社、あるいは管理組合が保管する場合は理事長と経理担当役員など必ず別々に保管する
- 同一人物が長期にわたって資金管理を担当しない
- 最低でも年1回は通帳の原本(記帳記録と残高)を確認する
- 小口現金の扱いは原則、廃止する
- 会計監査資料はフロント経由ではなく管理会社の本社経理部から理事長へ直送してもら う
管理組合のお金は、マンションの土地建物と同じように、区分所有者全員の大切な財産です。それが犯罪によって大きく減ってしまうのは、マンションの資産価値を下げることにほかなりません。
「うちのマンションでもいつ起こるか分からない」という危機意識を区分所有者全員が持ち、緊張感を持って取り扱うことがとても大事です。