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マンションの「施工ミス」について考える

株式会社ソーシャルジャジメントシステムSJS社長ブログ マンションの「施工ミス」について考える

マンションの「施工ミス」について考える

こんにちは。SJS社長の廣田晃崇(ひろたてるたか)です。

最近、分譲マンションの施工ミスについての報道が続いています。

昨日来、新聞やテレビで大きく取り上げられているのは、住友不動産が2003年に横浜市西区で分譲したもので、施工は熊谷組です。

このケースでは、5棟のうち1棟(11階建て、65戸)で基礎杭が支持層に達していなかったため、建物が傾いていることが分かったのです。

住友不動産のホームページでは、経緯を次のように説明しています。
http://www.sumitomo-rd.co.jp/news/files/1406_0003/0609_release.pdf

マンション分譲後、弊社が管理会社から当該住棟と他の住棟との繋ぎ部にある手摺がずれているとの連絡を受け、施工会社に調査と対応をさせました。また、その後も数回にわたり、異なる階の繋ぎ部で施工会社が補修を行いました。ところが、昨年管理組合様より再度不具合のご指摘を受けたため、施工会社に原因の報告を求めたところ、東日本大震災を含む数回の地震により生じたとの回答を得ました。しかしながら管理組合様から、原因は他にあるのではないかとのご指摘があり、弊社としても徹底調査するべく、施工会社とは関係のない第三者の調査機関に原因を調査させたところ、本年5月に今回の事態が判明したものであります。他の棟につきましては、このような繋ぎ部での異常は生じておりませんが、不測の事態に備え、同様の施工不良が生じていないか、当該調査機関に早急に調査させているところです。

「基礎」は建築物を支える極めて重要な部分で、マンションの場合は固い地層(「支持地盤」とか「支持層」と呼びボーリング調査で確認します)に届いていることが必要です。「支持層」が深い場合は杭を打ち込み、そうした基礎を「杭基礎」と言います。

今回のケースは、もともと「杭基礎」の長さが足りず、建物を支えきれなくてわずかですが傾いたようです。

これは明らかに「施工ミス」ですが、大地震で基礎杭が損傷して建物が傾くケースもあるとされます。

今回、このブログで取り上げたいのはこうした原因についてではなく、売主の不動産会社、施工した建設会社、そして管理業務を受託している管理会社の対応です。

上記の説明にもあるように、建物が傾いたことで他の住棟との繋ぎ目(エキスパンションジョイント)の手すりがずれる不具合が発生し、管理会社から不動産会社(売主)に報告が入っています。

この段階の対応はいわゆる「アフターサービス」に基づくものでしょう。

新築マンションの「アフターサービス」とは、一定期間に発生した建物や設備の不具合については、売主が無償で修理するというものです。今回のケースは不具合が誰が見ても明らかでしたから、補修はすぐ行ったはずです。

しかし、大きな問題はその先にあります。整理してみましょう。

1. 建設会社では詳細な調査を行わないまま、手すりのずれなどを直したようですが、その後、繰り返し別の箇所で同じような不具合が発生しています。

→ 不具合は根本原因をきちんと調査し、適切な補修を行わないと再発することがよくあります。表面上の不具合を直すだけでは、意味がありません。

2. 建設会社では昨年、再調査して今度は「東日本大震災を含む数回の地震の影響」としていました。

→ 東日本大震災では首都圏などでも多くのマンションに不具合が発生し、「大地震の影響」という説明がされました。しかし、中にはもともと施工ミスがあったケースも少なくなかったと思われます。「大地震の影響」であれば補修費用は所有者の負担ですが、施工ミスであれば売主や施工した建設会社の負担と考えられます。「大地震の影響」という言葉を鵜呑みにするのは危険です。

3. 昨日、管理組合の記者会見が行われ、「業者が問題を認めるまで大変な想いをした」と組合関係者がコメントしていました。

→ 不動産会社は長期間、問題の対応を建設会社に任せていたようで、今回、原因が判明したのも、別の原因があるのではないかということを管理組合が再三、指摘したのがきっかけでした。不動産会社(売主)や建設会社との交渉は、不具合が重大であればあるほど難しく、長期化するのが一般的です。

4. 管理会社が不具合について売主に連絡したとされていますが、その後、この問題について顧客である管理組合をどのようにサポートしたのかが不明です。

→ 売主の関連会社であることが多い管理会社ははっきりいって、売主とのシビアな交渉においては当てになりません。

今回の件の様に、交渉を重ねる事で当初の売主側見解が最終的には全く逆の見解となるケースは、弊社がコンサルティングを実施する物件において数多く経験しています。
同様のケースにおいて、多くの管理組合がいわゆる泣き寝入りを強いられているのが実状であるかと思います。

マンションはもともと、屋外の現場で、作業のほとんどを人手で行う一品生産品です。建物や設備に、大小の不具合が一定の確率で発生するのは避けられません。

大事なことは、早めにその不具合を見つけ、根本原因を特定し、売主の不動産会社や施工した建設会社ときちんと交渉し、補修してもらうことです。

特に、無償の「アフターサービス」(多くの部位の保証期間は2年まで)を利用することが重要です。

それによって、マンションの住み心地や資産価値は大きく変わってきます。

しかし、管理組合の役員のみなさんはボランティアであり、平日は仕事や家庭のことで忙しく、建築の専門知識もそれほどありません。

こうした対応を管理組合だけで行うのは正直、難しいと思います。

専門的な第三者を活用することが、必要だと思います。