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マンション管理についての認定制度・評価制度について(1)

株式会社ソーシャルジャジメントシステムSJSコラム マンション管理についての認定制度・評価制度について(1)

マンション管理についての認定制度・評価制度について(1)

いま新たな認定制度・評価制度が登場した背景

近年、マンション管理についての社会的な関心が高まっています。その具体例のひとつが、マンション管理に関する新しい認定制度と評価制度が登場したことです。これらの制度が登場した背景について確認しておきましょう。

●年々増え続ける「高経年マンション」と「管理不全マンション」

いまやマンションは都市部における代表的な居住形態となっており、東京都内では分譲マンションに住む世帯が全世帯の28%に達します(2022年、東京カンテイ調べ)。
また、全国に分譲マンションは約695万戸あり、1500万人を超える人が住んでいるとされます(2022年、国土交通省推計)。このうち築40年を超えるいわゆる「高経年マンション」は126万戸、約18%を占めており、これが2032年には260万戸、2042年には445 万戸になるとされます。

図表 築40年以上のマンションストック数の推移

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001623967.pdf

こうした「高経年マンション」では、建物や設備の劣化が進むとともに、所有者も高齢化するため管理費や修繕積立金の滞納、管理組合の役員のなり手不足など、ハード・ソフトの両面で様々な問題が起こります。これが「管理不全マンション」と呼ばれるものです。

例えば、東京都では1983年以前に建築された分譲マンションの約17%に、管理組合がない、管理者がいない、管理規約がない、総会が開かれていない、管理費を集めていない、修繕積立金を集めていない、修繕が計画的に実施されていないなど、管理不全の兆候があるとされます。

図表 東京都内の管理不全マンションの概要

要届出マンション:マンション管理適正化法第 56 条第1項に規定する人の居住の用に供する独立部分を6以上有し、かつ、昭和 58(1983)年 12 月 31 日以前に新築されたマンションのこと。都内に約 12,000 棟存在する。
管理不全の兆候:管理不全を予防するための必須事項である次の7つの項目(管理組合の有無、管理者等の有無、管理規約の有無、年1回以上の総会開催の有無、管理費の有無、修繕積立金の有無、修繕の計画的な実施(大規模な修繕工事)の有無)のいずれかが「ない」又は「いない」となっている状況
※「東京 マンション管理・再生促進計画」
https://www.mansion-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/pdf/01mansion-keikaku/01mansion-keikaku-03-05.pdf

マンションに限らず建築物は、適切な管理が行われていないとどんどん劣化が進み、最後は廃墟になることもありえます。
また、今後発生が懸念されている首都直下地震や東南海地震などの巨大地震において、いいわゆる旧耐震で設計されている「高経年マンション」は被害が大きくなりやすく、また資金力のない「管理不全マンション」の復旧が難しくなることは容易に想像できます。
さらに、分譲マンションが抱える大きな問題が、建て替えです。戸建てやアパートであれば、老朽化し管理が行き届かなくなれば取り壊したり建替えたりすることが比較的簡単に行えます。しかし、分譲マンションは建物の規模が大きいだけでなく、多くの区分所有者が関係することで合意形成が難しく、取り壊すのも建て替えるのもそう簡単には進みません。実際、2023年3月時点で分譲マンションの建替え実績は累計で282件、約2万3000戸にとどまり、これはストック全体に対して0.003%に過ぎません。
分譲マンションはとにかく管理をしっかり行い、できるだけ長く住み続ける、使い続けることが不可欠なのです。

●マンション管理に客観的な評価基準ができた意義と課題

こうした状況を踏まえて国が導入したのが「マンション管理計画認定制度」です。

この制度は2022年4月から施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」の改正に基づくものです。

分譲マンションの管理組合がそれぞれ、自分たちの管理計画を地元の自治体に提出し、管理体制が一定の基準に達していると判断されれば、認定を受けられます。

 23年9月15日時点で172のマンションが認定を受けています。

また同時にスタートしたのが、マンション管理の業界団体である一般社団法人マンション管理業協会が行う「マンション管理適正評価制度」です。

こちらは分譲マンションの管理状態を5つのカテゴリー・30項目で点数化し、その結果を6段階で示すものです。

23年9月18日時点では、1786の管理組合がこの制度にもとづく管理状態を公開しています。

日本において分譲マンションが本格的に登場したのは1960年代の高度経済成長の頃からです。

そもそも、分譲マンションについての権利関係を規定する「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」が成立したのは1962年(昭和37年)のことで、それから何回も改正を重ねて現在にいたっています。

また、分譲マンションの管理については2001年(平成13年)になってようやく「マンション管理適正化法(マンションの管理の適正化の推進に関する法律)」ができ、管理会社の登録制や国家資格であるマンション管理士が誕生しました。

その後、国(国土交通省)ではマンション管理についての様々なガイドラインや指針も出しています。

分譲マンションという存在自体、日本においては歴史的に新しく、ましてその管理についてはここ20年ほどで様々な制度が整ってきたところといえます。

こうした流れの中で今回、新たにマンション管理について客観的な評価基準ができたことは、一歩前進といっていいでしょう。 しかし、制度はつくっただけでは意味がなく、どう社会に広く普及させるのか、また私たちがどう使いこなしていくのか、両制度の真価が問われるのはこれからです。